2006年07月14日

あとがきのようなもの

小説をUPしてから、何と訪問者数が倍増しました。すぅ。ちゃんに感謝するべきなんでしょうかねえw。
この反響(?)にお応えして、すぅ。ちゃんからコメントを引っぱりだして来ました。

>皆さん
こんにちは。すぅ。です。AYAから話を聞いて、ちょっとびびってたじろいでます?????[???i???j。妄想満開の三文小説ですが、喜んで下さる方もいらしたようで、ちょっと安心しました。
まず住谷に関してですが、AYAに「男前に!」と言われる迄もなく、

私の目には住谷がこう見えていますが何か?
という感じです(笑

まあ、文章にするとすごいことになりましたが、住谷が彫刻のようなボディを持つ精悍な美男であることは事実ですよね。
人格的にも、小説に書いたような人物像からそれほどかけ離れていることはないだろうと思います。
基本的に住谷にはあまり脚色をせず、実物から大きく外れた書き方はしていないつもりです。
ちょっとクサいセリフを言わせすぎたかなーという気はしますが、公衆の面前で「人が好き」だの「こんな幸せなことはない」だの言える男ですから(笑、このくらい言いそうな気がします。
一方、インリンに関してはフィクションの要素が多いです、あまり深く考えず、ただ住谷に似合うような女性を書きました。実物についてそれほど深く知っている訳ではないので、インリンファンの方からみれば、「こんなのインリンじゃなーい!!」と言われるかもしれませんが?????[???i???j、決して悪く書いたつもりはないので許して下さい…。
あと、言っておかなければならないのが、「俺は、いつだって、君に関しては貪欲になるんだ」というセリフについて、これだけは、昔読んだ本からパクったものです。このセリフ、すごく気に入ってて使いたかったもので(笑
それと、インリンがHGの前で「内気な男性が好き」発言をしたトランスCDイベントは、実際は年が明けてから行われたものですが、この小説では流れ上年内に設定しました。
この小説では住谷は人生で大成功を収めますが、住谷が本領を発揮することができれば、ここまでじゃなくても、この7割か8割くらいは成功できるんじゃないでしょうか。今でも5・6割は成功してる気がしますし(笑
これからも住谷・HGには頑張って活躍してもらいたいと思います。それでは、拙い筆ですが、小説を読んで下さった皆さん、どうもありがとうございました!
posted by AYA at 14:51| Comment(1) | TrackBack(0) | HG&インリン小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月13日

☆星は夜に輝く(終)

それからの住谷は、星(スター)というよりは沈まぬ太陽の趣(おもむき)があった。
2007年秋、住谷は北野武監督の「緋海の澪標(みおつくし)」という作品で、ヤクザという社会的身分とゲイというアイデンティティの間で苦悩する青年を好演した。
舞台出身であるとはいえ、まだまだ経験の浅い住谷の演技はいささか朴訥ではあったが、それは幸い主人公のキャラクターに適したものであったし、また、共演者達がうまく住谷の演技を引き立ててくれた。撮影が進むに連れ、次第に演技力を向上させていった住谷は、俳優としても素質を持っていることを明らかにした。
この作品はカンヌ国際映画祭に出品され、栄(は)えあるグランプリを受賞することとなる。
また、この年、住谷はECWからのスカウトを受けて、以後しばしばアメリカのプロレスのリングにも出場し始めた。
プライベートでは2007年の初夏にインリンと結婚し、インリンは美麗なジューン・ブライドの姿でメディアを飾った。2008年の末には第一子の男児が誕生し、住谷は2009年のベスト・ファーザー賞を受賞する。
2008年春、カンヌ・グランプリ作品「緋海の澪標(みおつくし)」を観て住谷に目を止めたティム・バートン監督は、彼に次回作への出演をオファーした。
これが、住谷のハリウッドへの本格的な進出の第一歩となった。
2010年、ティム・バートン監督の「ガリヴァー旅行記」で、住谷はガリヴァーが訪れたナガサキのサムライ役を迫力ある演技で務めた。
さらに早くも翌年、ハリウッド進出第二作目となる、リチャード・ステファソン監督の「ストレンジャー(Stranger:見知らぬ人・よそ者)」に出演し、ユタ州の田舎に住む老夫婦の不思議な体験を描いたこの作品で、老夫婦の隣に住む奇妙な日本人夫妻の夫の役を演じた。
この年は、住谷・インリン夫妻の第二子である女児が誕生した年でもあった。
そして2013年、再びティム・バートン監督の作品に出演し、その「マイティ・シング(Mighty Thing:鉄人・タフガイ)」でとうとう主役の座を掴む。住谷はスーパーマン級のヒーローを見事に演じ上げ、また、ついにモーガン・フリーマンとの共演を果たすこととなったのだった。
この作品はアカデミー賞にノミネートされ、結果、8部門で賞を受けることとなり、主演男優の住谷正樹には、日本人では初めてのアカデミー主演男優賞が贈られることとなった。

コダック・シアターのステージで、住谷はオスカーと呼ばれる小さな男性像のついたトロフィーを抱え、マイクの前に立っていた。
四十近くでありながら、たくましい肉体は未(いま)だ衰える気配すら見せておらず、その容貌は若々しさを残す一方で、年を経て一層、大人の男らしさと貫禄と円熟味を増していた。
アカデミー賞の授賞式で、彼のスピーチが今まさに始まろうとしていた。
住谷はオスカー像をちらりと見て言う。
「オスカーはなかなかのハンサム・ガイですね。HGをやっていた頃なら、口説いていたかもしれません」
会場がどっと笑った。
「まずは、この映画を観て応援し評価して下さった全世界の、そして日本のファンの皆さんに感謝を。それから、この素晴らしい映画に私を出演させて下さったバートン監督と、傑作を創造する為に私を支え協力してくれた共演者・スタッフの皆さん、そして、愛する家族の皆にも――――。
私がここに来たのは実は二回目で、初めてここを訪れたのはもう七年も前のことです。あのときは色々と大変でしたが、今では、良い思い出フー!」
笑声と拍手が起こった。
「星は夜にこそ輝きます。そして、どんな時でも、信じ、希望し、行動する限り、明けない夜はありません」
満場の拍手喝采に包まれて、住谷正樹は、今まさに人生の頂点を迎えようとしていた。
「だから、私は人を愛する…」

===END===
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☆星は夜に輝く(6)

そして状況は一変した。
二人の熱愛とハッスル・エイドでの出来事の話題は、その日の内にまずインターネットの世界で炎上し、やがてテレビラジオその他のメディアで報道されると、このニュースに世間は爆発的な勢いで沸きあがった。
初めの内こそ、一部で嫉妬や失望の声が上がったものの、ほとんどのメディアとファンの間において二人の潔さは好感をもって受け止められ、世間は二人がキャラクターと本来の人格を分けることを受け入れた。
知的で爽やかにセクシーな美男美女の清(すが)しいカップルは、むしろ人々の憧れと理想を体現する恋人として人気をいや増し、ユニークでインパクトのあるキャラクターを持つ者どうしである面白さも手伝って、二人は却(かえ)ってこれまで以上に大ブレイクをするのであった。

二人の熱愛報道を見て、吉野社長は苦笑しながら呟いた。
「まったく、やってくれるわ、住谷の奴。大したタマだぜ、あの野郎――――」
重役達を会議室に招集すると、吉野社長はこう宣言した。
「我が吉本興業は、住谷正樹とインリン・オブ・ジョイトイの交際を全面的にバックアップするものである」

二人の熱愛報道に伴って、ハッスルもまたさらに知名度を上げ、その興行の集客数、スカパーやインターネットテレビなどの視聴率はうなぎ上りとなっていた。スポンサーのオファーが急増し、とうとうフジテレビとDSEは話し合いの場を設け、何がどうなったのか住谷や選手達にはよく分からなかったが、とにかく両者は和解した。どうにかこうにか再契約の大団円へと到った次第に、ようやく皆は胸を撫で下ろして安堵した。
住谷とインリンは、名実共に、ハッスルの救世主となったのだった。

結局、キャラを崩すどころか、キャラと素の人格で二倍楽しめる存在となった住谷は、ファンも二倍になったが忙しさも二倍となった。
ハッスル・エイドの後に住谷はハリウッドのコダック・シアターで行われた吉本新喜劇のロス公演に出演し、L・Aタイムズにも二ページの記事が載る大盛況の舞台で歓声を受け帰国すると、オファーの電話は鳴り止むことがないくらいだったが、ある日その中に無視することの出来ない人物からのコールがあった。
「世界の北野」本人による直々の映画出演のオファーのコールに慌てて応対した住谷は、ひたすら恐縮するしかなかった。ろくに言葉を考えることも出来ず、ただ、はい、はいと返事して、受話器の向こうの見えぬ相手に何度もお辞儀を繰り返す。最後に巨匠はこう言った。
「ニュース見たぞ、この野郎。何やってんだよ、お前はよ。俺と同じで、器用なんだか不器用なんだか、よく分かんねえ野郎だなあ」
「はい…本当に…ありがとうございます…」
住谷はそれ以上、何も言うことが出来なかった。言えば泣いてしまうことが分かっていたからである。
芸能人としてデビューしたわけではない「住谷」は、オファーが来ると出来るものは何でも引き受けているのが現状だった。そもそも発端がスキャンダルということもあり、将来的に安定しているとは言い難い。
北野武はそんな「住谷」に、とりあえず俳優という道を与えてくれようとしているのだ。その思い遣りが、住谷には痛いほどに伝わった。
もちろん、そんなことを言えば、北野武は半分照れて、半分本気で、「そこまで深く考えてねえよ。ただお前を俺の映画の為に使いたかっただけだ」と言ったであろうが。
――――そして、住谷は役者となった。
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☆星は夜に輝く(5)

ハッスル・レスラースタイルの住谷――――HGは端麗であり、そのファイトは華麗であった。スピード感、ジャンプの高さ、技の完成度――――レスラーとして見れば大柄とは言い難(がた)いながら、他のどのレスラーにも増してレスラーらしく、誰よりもリングを灼熱させる。
大盛況の内にハッスル・エイドの全ての試合が終わり、高田劇場と称される出演者による最後のマイクパフォーマンスも終わると、HGはリングを降りる他のメンバー達と異なり、マイクを持ったまま一人リングに残って、熱気と興奮の冷めやらぬ観衆に語りかけ注目を促した。
「――――ご来場の皆さん、どうかちょっとだけ、お時間を頂いちゃっていいですか〜」
会場が騒(ざわ)つき始め、やがて歓声へと変わっていった。スタッフや他の選手達は、訳が分からずに互いに顔を見合わせた。
「ありがとうございます。――――では、この場をお借りして、1つ重大なお話をしたいと思います」
HGは一人のスタッフに命じてリングサイドに置いてあったロングパーカーを渡させ受け取ると、コスチュームの上にそれを羽織り、マスクと帽子を取り去ってリング脇へと放り投げた。
会場が一斉にどよめき、リングサイドに人々が詰め寄せる。写メやデジカメのシャッター音やフラッシュの渦――――。だが、住谷が手で制すると、一瞬の後、続いて息を呑むような静寂が訪れた。
「――――実は、もうすぐ週刊誌などでも報道されるでしょうが、私、住谷正樹は、あそこにいるインリン様の友人であるインリン・オブ・ジョイトイさんとお付き合いさせて頂いていることを、ここで皆さんに告白します――――」
インリンは思わず口元を手で覆った。
「彼女は素晴らしい女性です。私などにはもったいない人だと思います。二つとはないこの宝物に、どれほどの代償を払えばいいのか、私には想像することすらできません――――。
喜びであり、義務として、愛は人に定められたもの。彼女を愛し、敬い、護(まも)ることは、私にとって避けがたい神聖な義務と言っていいでしょう。ファンの皆さんを大切に思い、必要とする気持ちと同じように――――。
このハッスル・エイドもまた、人の善意の為せる業(わざ)。健康で頑強な人間がそうでない人を愛する義務は、より強くあるべきものでしょう。
我儘であることを承知でお願いです。どうか住谷正樹としての幸せを―――― 一人の男に還(かえ)る時間を持つことを許して下さい。彼女を愛しています、心から――――そしてファンの皆さんを、人を愛する全ての人を――――愛しています」
そこにあったのは神々しいヒーローではなく、優しく、誠実で、愛情深い、多難な恋に苦悩する一人の青年の姿だった。
しばらくの間、沈黙のベールが広い会場を覆っていた。やがて、それを破ってまばらな拍手が起こり出す。それは次第に大きくなって、最後には会場を揺るがす割れんばかりの大喝采へと高まった――――。
私服に着替えたインリンが住谷の許(もと)へ駆けつけ、気を利かせたスタッフが流した「Livin’ La Vida Loca」と満場の拍手をBGMに、二人はリングで肩を抱き合った。
住谷は決して失敗しない訳でも、欠点が皆無という訳でもなかったが、ただ、それでも彼が人に愛される存在であり得るのは、たとえ失敗しても、その取り返しのつけ方が見事であり、欠点でさえ魅力的に見せることが出来るからであることを、リングサイドで二人を見ながら、出渕は今さらのように思い知り、感じ入ってしまうのだった。
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2006年07月12日

☆星は夜に輝く(4)

しばらくして住谷はインリンと会った。久しぶりに見る彼女の顔は青ざめて少しやつれていた。住谷の前に立つと、インリンは堪らずに両手で顔を覆いすすり泣き始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
小さく震えるインリンの細い肩を、住谷の大きな手が包んでそっと引き寄せた。
「仕方ないさ…俺の方こそ、悪かった。君にこんな迷惑をかけて――――俺が迂闊(うかつ)だったよ」
インリンは激しく頭を左右に振った。
「私は大丈夫。何とかなる――――と思う。いいえ、私のことなんか、いい。あなたはどうするの?」
「いつもの二重人格設定でいくことになった。君は「住谷君」の彼女だ。いいね?」
「それで大丈夫なの?」
「さあ…でも、他に手はなさそうだ。こんなつもりじゃなかったんだが…もし駄目だと言われるなら仕方がない。HGに食い尽くされて惚れた女を泣かすくらいなら、俺はこの業界を――――」
言い終わらぬ内にインリンが手を伸ばし、そろえた指で住谷の唇を止めた。
「言っては駄目、それ以上」
「…だけど…」
サラリーマンの平均月収を知ってる?」
質問の意図が分からず、住谷は黙って先を待っていた。
「約36万円よ。若い人達は――――この人なんかの月収はもっと安いわ」
言ってインリンは自分のマネージャーに目を遣った。マネージャーは肩を竦(すく)めて見せる。
「そしてハッスルチケットは安い席でも6千円くらいする。月収36万円の割合で考えれば結構な額よ。――――それでも、それだけのお金を払ってファンはあなたを観に来ている。
それだけじゃない。あなたの為にグッズを買い、劇場に通い、必死になってテレビ出演のスケジュールを調べるファンがどれほどいるか。
あなたを見る為だけにスカパーに加入し、最新のDVDレコーダーを買い、ハイヴィジョンテレビを買った人もいる。
そんな人達を見捨てては駄目。私の為に、あなたを愛し、必要としている人達を裏切らないで」
インリンの話を聞きながら、やがて住谷は深く切ない溜息をついた。
「手遅れだ。俺はこんなにも、君を愛している…」

何かとごたごた問題はあるものの、とりあえずハッスルの2006年上半期最大のイベント、ハッスル・エイドは予定通りに行われることとなった。
これは骨髄移植推進財団等の団体を支援し、興行を通じて骨髄バンク登録を訴え、ドナーの増加に貢献する為に設けられたイベントであった。
住谷――――HGもかなりの時間と労力を費やして吉本サイドをどうにか説き伏せ、ドタキャンという事態だけは防ぎきって出場にこぎつけた。
相方の出渕誠と共に会場のさいたまアリーナに向かうハイヤーの中で、住谷は少しだけ仮眠をとった。引き締まった精悍な頬には拭(ぬぐ)えぬ疲労の色が濃い。
多忙な上にこれだけ問題が重なり、ろくに睡眠をとっていないのだから無理もない――――と出渕は長い脚を窮屈そうに折り曲げて隣のシートで眠る相方を見ながら思った。
野性と優雅が完璧に融合した、生けるギリシア彫刻の様なこの若者に題名を付けるとしたら、それは今、「苦悩」ということになるであろう。やつれた様子でありながら、それが美貌を損なうことなく、一層凄(すご)みを増した陰のあるすさまじい色気が滲み出していた。
やがて二人は会場に着き、控え室入りをした。
今日、顔を見てからろくに口を開かず、いつにも増してむっつりと押し黙ったままの住谷の様子が、どこか何かを思い詰めているような気がして、出渕は他の選手に聞こえぬようにこっそりと住谷に言った。
「住谷、お前、大丈夫か?」
「何がや?何もあらへん、大丈夫や。人より自分のことを心配せえよ」
相方の前では、住谷は地の関西弁に戻る。出渕は苦笑して言った。
「これでも必死でやってるんやけどなあ。この前一緒に出た番組、お前が写ってたのが21分10秒で、俺は6分40秒やったぞ」
「それは、秒合計で1270秒割る400秒、つまり俺がお前の3.175倍仕事してたからや」
一瞬に暗算して言うと、住谷はウォーミング・アップに入った。
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☆星は夜に輝く(3)

それから数日後、嵐の第一波は「ハッスル音頭」の着メロを鳴り物として訪れた。
住谷の携帯電話において、その着メロは小川直也からのコールを意味するものだった。
通話ボタンを押すなり、小川は言った。
「――――DSEがヤバいことになってる」

理由は不明だが、ハッスルの興行主であるDSEが、興行の放送と製作を担当しているフジテレビとの契約を一方的に打ち切られたというのだ。6月17日に予定されていたハッスルの大イベント、ハッスル・エイドが開催される直前の週のことだった。
フジに倣(なら)った地方局やスポンサーが立て続けにDSEから手を引き出し、幹部や選手に大きな動揺をもたらした。予定されていたエイドの地上波テレビ放送も打ち切りが決定し、エイドの開催自体、危機的状況に瀕(ひん)していると思われた。
さらに、DSE関係の人物や選手の出演をフジテレビが拒否する姿勢を示しているという噂もあって、そうなると、ハッスルの輝けるエースであるHGは、レスラーとして最高の舞台を失うだけでなく、フジ系列の局では番組出演の機会を失うことになる。
芸能活動を取るかプロレス活動を取るか――――それは住谷にとって酷に過ぎる選択だった。
――――どうする――――
住谷は頭を抱え込んだ。
DSEの存続が危ぶまれている以上、ハッスルを見捨てなければ自分に将来はないかもしれない。HGが所属する吉本興業もそれを要請するであろう。
――――だが、ハッスルを見捨てて自分にどんな将来があるだろう?今、エースである自分がハッスルを脱(ぬ)ければ、DSEの状況はさらに悪化するだろう。出来ることなら続けたい。もしハッスルが終わるものならば、せめて最後までやり抜きたい。その間、フジと吉本の圧力に耐えることが出来れば――――。
リングの外でも、住谷は戦うことになりそうだった。しかも今回、何かを失わずにいることは、どうやら出来ない様だった。
住谷は、同じ立場にいるであろうインリンにコールしようとして、携帯電話に指をかけたところで思い止(とど)まった。彼女なら自分と同じ選択をするであろうことを、住谷は明日また太陽が昇るのと同じ確率で確信していた。

悪い時には悪いことが続くものらしい。
さらに数日して、住谷は吉本興業の社長室に呼び出された。またDSEとハッスルから脱退するようにとの「説得」か、と思ったが、そうではなかった。
社長室に入ると、吉野伊佐男社長はデスクの自分の前に住谷を招き、無言で手元の書類を彼に渡した。それはある写真コピーしたもの、あるいはファックスで送られたものであるかもしれなかった。
そこに写っていたのは、住谷の部屋から出てきたインリンと彼女の頬にキスをして見送る住谷の姿だった。
「――――今度のフライデーに、これが載るそうや」
「――――!」
しまった、と住谷は思った。大衆芸能週刊誌が自分などに対してまさかここまでやるとは思わなかった。さすがにマンションの出入りには気を遣っていたものの、部屋の出入りにまでは気配りを怠っていた。
――――やられた。
甘い幸福感と陶酔感に目が眩(くら)んでいたせいもあるが、そもそも、忙しすぎるせいもあって、その知名度の高さにも関わらず、住谷にはおかしなくらい有名人としての意識が薄かった。
手からこぼれ落ちるように住谷は書類をデスクに戻す。吉野社長は大きな音を立ててデスクの上の書類に平手を叩き付けると、住谷に向かって一喝した。
「何やっとんねん、お前は!お前、ハードゲイやろが!」
住谷は返す言葉も無い。いっそ、絶妙な、と形容したくなるほどのタイミングの悪さであった。「不幸は友を連れて来る」とは英語の格言であるが、住谷は苦々しい思いでそれを実感した。
「――――申し訳、ありません――――」
「こうなったら、しゃあない。こんなんこそ、いつもの二重人格設定でいくしかあらへん。インリンと付き合(お)うてるのはHGや無(の)うて住谷や。――――ええな。もうすぐインリンとマネージャーも来るさかい、よう話し合(お)うとけ。
――――しかし、このスキャンダル、あんまりひどい結果になるようやったら――――お前、覚悟せえよ」
posted by AYA at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | HG&インリン小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月11日

☆星は夜に輝く(2)

内気という点では、インリンも住谷に劣ってはいなかった。
冬になり、トランスCDの発売イベントで共演したときも、インタビューで好みの男性のタイプを尋ねられた答えにかこつけて、「私は真面目で大人しい内気な男性が好きです。でも、私も内気な方なので、なかなかうまく気持ちを伝えられなくて…」と言うのが精一杯だった。
住谷も、「じゃあ、両方内気だったら、なかなか発展しませんねえ」と軽く受け止めていたようで、こんなことではずっと伝わることはないかもしれない、と思っていたインリンには、実はこのとき、自分が住谷の心中に見えざるパニックを引き起こしていたことなど、知るはずもないことだった。

住谷の誕生日が近づいた12月のある日、二人はいっしょに遊びに出かけると、カフェロイヤルミルクティーをスプーンでかき混ぜながらインリンは尋ねた。
「住谷君、お誕生日のプレゼント、何か欲しい物ある?何か凝ってるものとかハマってるものってあったっけ?」
「んー…そうだな…。これ、かな」
住谷は自分の手元のコーヒーカップのソーサーから銀のスプーンを取り上げてみせた。
「スプーン?それが欲しいの?」
不思議そうに尋ねるインリンの前で、備え付けの紙ナプキンで銀のスプーンを少し磨くと、住谷はそれをインリンの目の前に差し出した。
「――――よく見てみ」
小さなスプーンの曲面に、インリンの姿が小人の様に映り込む。
「これが、今、俺が一番大好きで夢中になっているもの」

こうして二人はその日から彼女と彼氏になった。
住谷のハードゲイキャラという立場上、そしてインリンのグラビアアイドルという立場上、二人の交際を公にすることはできず、忙しい合間をぬって僅かな時間を共にすることしか出来なかったが、それでも二人は幸せだった。――――今もそうであるように。

住谷がベッドから起き上がると、インリンは我に返った。一瞬、ヘアブラシを使う手を止めてしまっていたことに気付き、再び髪を梳(と)かし始める。すると住谷がインリンを背後から抱きすくめ、ブラシを持つ彼女の手に自分の指を絡めた。
「髪が梳(と)かせないわ」
インリンは抗議した。自身を包むたくましい腕と胸板の圧力は決して嫌なものではなかったが。
「髪が乱れるようなこと、したくないか?」
住谷は構わずそう言うと、インリンの肩に口付け、上へと細い首筋に唇をはわせた。
「ダメよ、遅刻するもの」
「俺が言い訳を考えるよ」
言いながらローブの前合わせを開き、インリンの優美なラインを描く白い脚を露(あらわ)にすると、滑(なめ)らかな太ももの上に手を置いた。彼女はその手をぱちりと叩いた。
「もう、さっきまで眠そうな顔してたくせに、いやらしいことしないの、こら」
「いやらしいって…悪かったな。君があんまりセクシーで魅力的だからからいけない。俺は、いつだって、君に関しては貪欲になるんだ」
その熱烈な一言は、彼女の分別を打ち崩す強烈な一撃となった。インリンは瞠目して振り返り、背後の住谷に目を遣った。間近で熱っぽい視線を受けて、彼女の頬にぱっと朱が散る。何も言えなくなったのは、キスで唇をふさがれたせいだけではなかった。
照れ屋で内気な反面で、時折見せる住谷のこういう押し隠された激しく情熱的な一面が、インリンはたまらなく好きだった。
顔が離れると、住谷の黒目がちの瞳と目が合った。
美しい男だ――――とインリンは思う。
付き合いだしてもう数か月になる。こうして肌まで合わせる仲だというのに、今だに、気を抜くと思わず見惚れてしまうのだ。そして何より、魂が美しい。
これほどの男が自分のものであることを、彼女は今さらながらに信じられない幸運に思った。一方で住谷の方も、インリンに対して似た様なことを思っていた訳であるのだが。
百合の花を思わせるインリンの手が住谷の背に回され、今度は彼女の方からキスをした。
住谷は帯を解いてインリンのローブを彼女の体から滑り落とすと、豊かな胸元に端整な顔を埋(うず)め、器用に歯でブラのフロント・ホックを外した。
インリンを抱え上げ、二人でベッドに縺(もつ)れ込むと、官能的な響きを持つ住谷の声がインリンの耳元を小さくくすぐった。
「――――こんなに幸せなことはない…」
posted by AYA at 12:01| Comment(1) | TrackBack(0) | HG&インリン小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

☆星は夜に輝く(1)

その日、インリン・オブ・ジョイトイはいつもとは違う目覚し時計のメロディで目を覚ました。
さっとモーニングシャワーを浴び、ローブをまとって髪を梳(と)かしながら服を置いてあるベッドルームに戻ると、ベッドの中からこのマンションの主の声がした。
――――住谷正樹。または芸名をレイザーラモンHGとして知られる男の声だった。
「もう時間か…?」
さっきまで彼女の隣で眠っていた男は、長く形の良い指で顔を撫で下ろしながら言った。
スツールに座るインリンに、まだ少し眠たげな眼がとろけた視線を送る。囁くような低く甘いバリトンの声が、彼女に昨夜の感覚を思い出させた。
「8時、廻ってるわよ。あなたももうすぐ出る時間でしょう?そろそろ起きないと遅れちゃうわ」
二人とも多忙を極(きわ)める身であるだけに、一緒にいられる時間は自ずと限られてしまう。特に、今日の様に住谷の朝の出動時間が遅く、共に夜を過せるような逢瀬は月に幾度もない。貴重な朝も忙(せわ)しないものにならざるを得なかった。
住谷は小さく吐息を洩らし、うつ伏せに両肘をついて軽く上体を起こした。シーツの端が背に滑り落ち、見事に均整の取れた肉体の上半身が露(あらわ)れる。
まるで獅子か虎が寝そべっているようだ――――とインリンは思った。そして、初めて会ったときも、彼にそんな印象を抱いたことを彼女はふと思い出した。

二人が初めて会ったのは、ショープロレスであるハッスルの2005年秋のビッグイベント、ハッスル・マニアにおいてだった。
それまでも、両者共にセクシー・エロかっこいいを看板に活動するキャラクターであり、また、M字開脚というポーズを共通して行うパフォーマーであったから、何となくお互いが目に付く存在ではあった。
実際に会ってみると、これまた共にキャラクターと実物の間に大きなギャップを有していることを知り合って驚き、そんな二人の親近感が好意に変わるのにほとんど時間はかからなかった。
インリンはハッスルのリングで住谷の猫科の猛獣を思わせるしなやかな筋肉が躍動する姿に目を奪われ、そのオーラの輝きに圧倒された。そして、インリンほど美しく、過激なキャラクターでありながら淑(しと)やかな内面と卓越した身体能力を有する女性は、住谷にとって女神だった。

もっとも、インリンは、住谷を完全に見切れるものとは思っていなかった。知れば知るほど、理解と同時に謎の部分が増えてゆく。
驚くような馬鹿馬鹿しいはじけっぷりの後で、大人しく小難しい本を読んでいたりする。少年めいた笑顔を見せるかと思えば、やけに大人びた表情でむっつりと考え込み、非常に生真面目で常識人でありながら、妙なところでエキセントリックな一面がある。大胆にして繊細――――。
人間のあらゆる矛盾を体現する住谷のつかみ所の無さは、近づくほどにインリンの興味を引いた。
やがて、回を重ねるごとに仲良くなったハッスル・メンバー達は、度々打ち上げなどに食事に行くようにもなったが、素に戻った住谷は、ステージで見る神の寵愛と恩恵を一身に受けたような男と同一人物とは思えないような、寡黙で内気な青年だった。
キャプテン・ハッスルの小川直也も焼肉を食べながら、笑って言ったものである。
「住谷、お前本当にHGか?」
住谷は苦笑するしかない。
「確かに、自分でも今やってるような派手な仕事、性格的に似合ってないのかもしれないと思いますよ。俺、見た目こんなんですけど、メンタル弱いですからねえ…。後から怖くなったこと、何度もありますよ。
…でも、やめられないっていうか、やめたくないというか…不思議な事に、ステージに立ってるときは、ストレスとか嫌な事、みんな吹っ飛んじゃうんですよね。人が笑ってくれてると安心するっていうか…結局、人が好きってことなんでしょう――――」
その瞬間、インリンは恋に落ちたことを自覚した。
住谷は、言って照れたのか、アルコールに弱いくせにぐいと一口でビールを流し込み、口の端に残った泡を舐め取った。少し厚めの下唇の上を艶めかしく舌が動く様子に思わず生唾を呑み込みかけて、インリンは慌てて自分のウーロン茶を飲み下してごまかした。
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HG&インリン小説UP

管理人の親友であり心の姉妹である(笑)すぅ。ちゃんからちょっと大人向けな小説を頂きました。これから数回に分けてUPしたいと思います。人によっては拒否反応を起こされる方もいらっしゃるかもしれませんが…(^^;)。
お上品な私のブログをエロで汚したくはなかったんですが、すぅ。ちゃんには弱みを握られているので逆らえません(笑)。
実は「もしHGの彼女がインリンだったら」という萌え小説をリクエストしたのは私なんですが、ラブラブで、と彼女に言ったらこうなりましたw。あと「住谷を徹底的に男前に!」とリクエストしたらえらいことになってます(笑)。おおまかなストーリーと基本的な設定は二人で話し合いましたが、実際の描写とか執筆はすべてすぅ。ちゃんの責任ですw。ちなみにもちろんこれは実在の人物をモデルにしたフィクションであり、実際のHG、インリン、その他の人物・企業などとは一切関係ありません。
では(できれば)お楽しみ下さい。
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